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プログレッシヴロックバンド " MAU2/マウマウ " のオフィシャルブログ
2011年 08月 02日
YESの新譜『FLY FROM HERE』を聴く
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巷でいろいろ評判になってるYESの新譜、気になってちらっとYOU TUBEを見、
これは期待できるかも?と思い、即アマゾンにポチッと一押し。

ところで、YESの新作って何年ぶりに買ったんだろ?
『KEYS TO ASCENSION』(1996)を購入以来だから、15年ぶりってことになる。
ちょっとオドロキである。そんなに疎遠になってたのか・・・。
今回はバグルスの2人が参加の『ドラマ』YES。新加入のヴォーカリストのことも気にかかる。

まずはジャケットを眺める。
アートワークはもちろんロジャー・ディーンである。

YESのロゴが若干気持ち悪い(m(_ _)m)のと、全体の色調が暗めなので、
あまりパッとした印象ではないが、
ロジャーにしか表現しきれない世界がそこにあって、圧倒的な存在感を示している。
そしてその世界観は確実にYESの世界観に繋がっている。
表、裏、他、絵柄が違うが、これ全て元々原画は一枚の絵で、
場所場所でトリミングされて使用されているのだろう。
全体が繋がった絵が見てみたいなあ・・・。


それでは、曲について。

1~6曲目までは、アルバム・タイトルでもある組曲『Fly From Here』。

1曲目『フライ・フロム・ヒア~オーバーチュア』は、期待感高まる序曲。
この導入はいいぞ、ウエルカム!の姿勢になるもん。

2曲目、新生YESの本領が早々に発揮される『フライ・フロム・ヒア part1』。
聴き応えのあるメイン曲で、貫禄のプレイ。
クリスのベースの太い音がサウンドの芯をキープしてるので、
スティーヴお得意のオブリのようなソロのようなフレーズが
前線を行ったり来たり。

3曲目『フライ・フロム・ヒア part2』は、
聴いていてなんとなく”オフコース”を思い起こさせた。
ヴォーカルも小田和正っぽい。
YESはついにオフコースを真似たか?
いやあ、そんなこたあ~ないです・・・(^_^;)。
でもこれはちょっと驚きである。
オフコース解散前のアルバム『I LOVE YOU』当たりの音に近いように思う。
実際当時のオフコースもサウンドの完成度は高く、
キーボードの使い方も凝っていたよね。

4曲目『フライ・フロム・ヒア part3』。
『ドラマ』YESを強く感じさせる。
ヴォーカルのベノワは、YOU TUBEでYESのトリビュート・バンドで歌っていて、
それをクリスが見てスカウトしたという話だが、
ジョンに似ているというよりは、トレヴァーに近い。

アルバムを制作するに当たって、
ジョンを意識して歌うのか、
うんぬんかんぬんいろいろ意見が出たと思われるが、
ベノワの本来の歌い方を基本にしたのだろう。
正解である。YESの公式アルバムなのだから。
くせがなく伸びやかな歌声で、ぼくは好感を持っているが、
YESのサウンドとして聴くと、何か物足りないかも・・・と採点が辛くなる。

さて曲は、とても凝っていて、ジェフのキーボード・ワークも素晴らしい。
ジェフは派手なソロは少ないが、多彩な音色、効果的なオブリガード、
オーケストラに匹敵する分厚いサウンドメイクの旨さでは、ピカイチかもしれない。
昨今ヴィンテージ・キーボードが持てはやされるプログレ界であるが、
ジェフは、デジタル・シンセをメインにしてる所が、”清い”と言える。

5曲目『フライ・フロム・ヒア part4』。
イントロは『90125』っぽい。でも作曲はスティーヴ・ハウ!
トレヴァー好みのサウンド・メイクに寄ったからなのか。
リック・ウェイクマンが好みそうなリフだなと思ったら、
息子のオリバーが参加してるんだ。

6曲目『フライ・フロム・ヒア part5』。
part1のリプライズである。組曲のラストの感動フィナーレになるべき所。

と、組曲を聴いて、ちょっと待て。

この5曲目とフィナーレの6曲目がどうも引っかかるなあ。

長い曲の場合(プログレはもちろん、クラシックでも)大きな感動を呼ぶには鉄則があって、
混沌とした激しい演奏があって、その後ギリギリのところでそこを突き抜けて解き放たれ、
感動のメロディーに繋がっていく、いわゆる”緊張と緩和”の法則である。

YESで言えば『危機』の後半からラストに繋がる部分、
クラシックなら、ベートーヴェンの5番の3楽章から4楽章に繋がるところ、
ショスタコービッチの5番の4楽章冒頭・・・。挙げればきりがない。

その法則からいくと、この5曲目はちょっと弱い。

ここからがぼくの推論である。

元々2曲目が最初にできていた(『ドラマ』制作時だろね、バグルスのコンビで)。
そして対の形で4曲目ができた(これも同時期かもしれない・・・知らないけど)。

さあ、そこからだ。

歌物を間に挟んで組曲らしくしようとのトレヴァーの意図で3曲目を作る。

「組曲なんだから、冒頭に曲のモチーフをいろいろちりばめた
”序曲”をインストで持ってきたら?」

って誰か(トレヴァーだろな、やっぱり)言ったんで、1曲目を作る。

「2曲目のサビをラストに持ってきたら組曲のラストぽいよ!」

ってまたまた誰か(クリスあたりか?)言って、

「ならそれにつなぐ曲スティーヴ書いてよ!」

「そうねえ・・・OK! なら隣のスタジオで作ってくるわ!」

ってことで、5曲目は作ったようなかんじで、
繋がり感が薄く安易な感じがするのである

(経緯まったく知りません・・・^^; 
2曲目と3曲目が既にできてたようですね・・・実際は)

何とももったいない・・・。

でもこの辺のところ、バンドサイドにもいろいろ事情があるのでしょうね、きっと。

例えば、

①あまり盛り上げすぎず、ライトな感じに仕上げたかった
とか、
②メンバーの拘束リミットがきて、時間切れになって、仕方ないから編集で逃げた
とか、
③どうしてもいいメロが浮かばんかった
とか・・・・、

ないか・・・(-_-;)。

う~~ん、
複数のテーマを絡めながらだんだんそれを解いていくように盛り上げ、
ラストは新たな感動的な歌を作って、それに繋いだら、
新たな名曲と呼ばれたのかもしれないのになあ・・・・

知りませんが(^_^;)・・・

偉そうに・・・

ごめんなさいm(_ _)m。

んなわけで、今回のアルバムの評価はこの組曲に尽きるでしょうね。
支持するか、しないか・・・。
好きか、嫌いか・・・・。

他、
7曲目。組曲の後のリラックスできる曲。80年代ホール&オーツ風。
8曲目はグレグ・レイクが脳裏に浮かんだ。

11曲目。ラスト曲(ボーナス・トラックを除いて)。
これが一番YESを感じさせる。ジョンの声も遠くから聴こえてきそう・・・である。
クリスのベースがいいね、唸ってる。この感じ『トーマト』YESとも言えるかな。

最後にまとめってわけじゃないけど、
とにもかくにも、2011年の現在、YESの新譜が聴けるってことに
まずYESメンバーに感謝しなくっちゃね。
細かいことは置いといて、ヤル気の感じられる力強いアルバムです。

じゃあ、YES初心者がこのアルバムから聴いてみようかな?なんて思うようなら、
「いやいや、ちょっと待って!できれば『危機』まず聴いてからにしなよ」
って言ってしまいそうだし、
「『危機』敷居高いって言うなら、せめて『DRAMA』聴いてからにしようよ~・・・」
とも、言ってしまいそうなかんじ・・・切れが悪い・・・スマン。

おまけで、素朴な疑問。
YESのロゴが表と裏で違うのはなぜ?
推測だけど、ロジャーがプレゼン用に2案考えて皆に見せたら、
どちらもいいねってことになって、2つ採用になったんじゃないかな。

by gwingermau2 | 2011-08-02 12:47 | プログレCDレビュー


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